薬剤師の悩みのトップに上がるのが「コミュニケーション」ですが、企業が求める人材の資質として挙げているのも、実はコミュニケーションスキルなのです。そこで、薬局・医療コミュニケーションコンサルタントを務める村尾孝子先生に、薬剤師業務におけるコミュニケーションの重要性についてお話しいただきます。今回は「職場別のコミュニケーション 病院編」をお送りします。

チーム医療における薬剤師の役割を伝える

Q 入院中の女性患者(60代)は、医師と看護師には何でも話している様子ですが、私を含め、薬剤師には「特に話すことはないよ」の一点張り。どのように対応したらよいでしょうか。

まずは薬剤師の皆さんが患者さんと接する際に「心を開いて接しているか」を考えてみましょう。人は「相手が心を開いているか」を敏感に察するもの。仕草や表情、声のトーンでも伝わるものです。たとえ皆さんに「心を開いていない」つもりがなかったとしても、勘違いされることがあるため、普段の話し方や立ち居振る舞いには十分気をつける必要があります。

では、患者さんに心を開いてもらうには具体的にどうすればよいでしょうか。
一つ目は、薬剤師である皆さんが「心を全開にして接する」ことです。
医療従事者は患者情報を把握しているのに対し、患者さんは私たちについて何も知りません。そのため、お決まりの挨拶や薬剤の話だけでなく、ときには自分の趣味の話をすると「この人は自分のことをよく話してくれるから、私も話をしてみようか」という気持ちになるはずです。
その際、絶対に欠かせないのが「笑顔」。患者さんと接するときに必要以上に身構えて、緊張した硬い表情になっていませんか。笑顔は相手からの信頼や好意を得るだけでなく、警戒心を解いたり緊張をほぐしたりする働き、ときには本人の自信を示す効果もあると言われています。ですから、どんな状況であっても笑顔を忘れずにコミュニケーションを心掛けましょう。また、丁寧な言葉遣いは大前提ですが、過剰な敬語にも注意しましょう。

二つ目は「チーム医療における薬剤師の役割や業務内容を分かりやすく伝えること」です。患者さんは「医師に話しているから、薬剤師に話す必要はない」と考えがちですが、それは、チーム医療においての薬剤師の役割や仕事内容が患者さんに伝わっていないことが原因。まずは、薬剤師が患者さんにどんなことを提供しているのかを説明しましょう。
その次は「あなたの役に立ちたい気持ち」を伝えます。そして、役に立つために自分の質問に応えてほしいのだということを伝えるのです。ときには薬剤師が患者さんと医師の架け橋となって、患者さんの言いにくいことを医師に伝えてもいいかもしれません。「薬剤師さんってこんなことまでしてくれるんだ」と患者さんに喜んでもらえれば、信頼関係の構築にもつながります。

案ずるより産むが易し。失敗を恐れず、チャレンジが重要

Q.委員会活動で他職種との意見交流があります。しかし、他職種に圧倒されてしまい、あまり発言できません。自信を持って話すコツを教えてください。

病院薬剤師の方々からよく相談される悩みですね。いきなり自信を持って話すのは難しいですから、今回は「他職種に対する苦手意識を克服するポイント」を紹介します。ポイントは4つ。
一つ目は、他職種と話すハードルを下げること。院内で委員会メンバーとすれ違った時や、委員会が始まる前など、自分から挨拶しましょう。会話の練習のつもりで声をかけてみてください。何度も挨拶を交わすことで自然と親近感が高まり、委員会の場で緊張することも減るはずです。また、委員会がはじまる直前も、できるだけ多くのメンバーと挨拶や世間話をして、リラックスして挑みましょう。

二つ目は自己開示。発言する際にあえて「緊張していてうまく言えないかもしれませんが」と前置きをして、心境を告白します。万一、言葉に詰まったり、話す内容を忘れたりしても、参加者からは「緊張しているんだな」と優しく受けとめてもらえ、場合によってはフォローしてもらえるからです。

三つ目は失敗を恐れず、自分の意見に自信を持つこと。「馬鹿にされるのではないか」「みんなのような立派なことは言えないか」と他人と自分を比べて、臆病になることがあるかもしれません。しかし、誰だって最初は失敗するもの。間違っていたら、やり直せばいいのです。

最後は、日頃から情報収集に努めること。日々の業務の中で気づいたことは、薬剤師にとってはささいなことでも、他職種からすれば「有益な情報」になり得ます。「自分の意見が他職種の役に立つ」と前向きに捉え、「薬剤師の視点」から自信を持って発言してみてください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家プロフィール

村尾 孝子

村尾 孝子(むらお たかこ)

薬剤師、医療接遇コミュニケーション コンサルタント、企業研修・講演・セミ ナー講師、株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業、埼玉大学大学院経済学部経営管理者養成コー ス修了、病院・薬局・教育研修会社勤務を経て現職。