薬剤師の悩みのトップに上がるのが「コミュニケーション」ですが、企業が求める人材の資質として挙げているのも、実はコミュニケーションスキルなのです。そこで、薬局・医療コミュニケーションコンサルタントを務める村尾孝子先生に、薬剤師業務におけるコミュニケーションの重要性についてお話しいただきます。今回は「職場別のコミュニケーション 薬局編」をお送りします。

上司との円滑なコミュニケーションには、信頼関係を築くことが第一

Q 管理薬剤師が他の薬剤師の意見を聞いてくれず、スタッフ間の不満が募っています。管理薬剤師にうまく意見を言うにはどうしたらよいでしょうか。

管理薬剤師とのコミュニケーションがうまくいかないという悩みは多いですよね。今回のシチュエーションの場合、四つの点に注意してコミュニケーションを取ることをおすすめします。

一つめは、管理薬剤師との信頼関係をしっかり築くこと。これが何より大切です。ご相談からは、管理薬剤師とスタッフとの間にすでに距離ができてしまっているように感じます。意見を聞く気になるかならないかは、根底に信頼関係があるかどうかに大きく左右されるものです。仕事のことに限らず何でも話せるコミュニケーションを日ごろから心がけてください。スタッフが管理薬剤師を信頼していることが伝われば、業務上の提案も受け入れられやすくなると思います。

二つめは、なぜ管理薬剤師が周囲の意見を聞かないのか、その背景を考えてみましょう。多くの薬局で、管理薬剤師はプレイングマネジャーの場合が多いと思いますが、今、スタッフが言っているアイデアは過去に自分で試したことがあり、失敗を経験しているから、意見を採用しないのかもしれません。周囲の意見を受け入れないのには何か理由があるはずです。もともと頑なな性格の持ち主かもしれませんが、そこに至る経緯も慮って意見を述べれば、自然と敬意を伴う言い方になるでしょうし、管理薬剤師の機嫌を損ねることもないと思います。自分を理解して欲しいと思ったら、まず相手を理解する努力を惜しまないこと。

三つめは、管理薬剤師の立場を尊重して自尊心を傷つけないこと。その人の考えややり方を頭から否定するような意見は控えましょう。例えば「少しご相談したいのですがお時間よろしいですか?」と相手を気遣う姿勢を見せ、意見するというよりは提案するという気持ちでお話してみてはいかがでしょうか。その際、管理薬剤師対スタッフの1対多数という図式を作らないこと。くれぐれも、意見を取り入れてくれない相手を打ち負かしてやろう、などという気持ちが出ないように気をつけましょう。

四つめは、一度で決着を着けようと思わないこと。新しいことに挑戦するよりは現状のままでいたいという気持ち(現状維持バイアス)が管理薬剤師に強く働いていると感じた場合は、まずは簡単に取り組めそうな内容を提案したり、表現を変えて繰り返し提案したりと、頑なになった心をほぐす工夫をしてみましょう。

服薬指導は患者さんの安全のため。質問に応えるメリットを知ってもらうことも大切

Q 服薬指導時、何を質問しても面倒臭そうに「別に」としか回答しない患者さんがいます。こちらの質問にきちんと応えてもらうにはどのように質問をすればよいでしょうか。

そもそも服薬指導は、患者さんが適切な薬物治療を受けるためのものです。ここを取り違えると、薬剤師本位の質問になってしまい、患者さんは「答えたくない」「答える必要は無い」と判断してしまう恐れがあります。
患者さんが「別に」としか答えないのは何故でしょうか。「医師から説明されて全部分かっているから、薬局での質問に答える必要は無い」と考えているのか、「毎回同じことを聞かれて、答えるのが面倒」と思っているのかもしれません。または、過去に服薬指導で嫌な思いをしたことがあるのかもしれません。もちろん「時間がない」という場合もあるでしょうが、薬剤師の質問に答えることにメリットを感じていないことが想像できます。
実は私も、何を聞いても「別に」と答え、長年にわたって併用薬を一切教えてくれない患者さんを担当したことがあります。ある日、併用薬を教えてくれない理由を尋ねたところ、「教えたって、何にも変わらないだろう?意味が無いよ」との返事。しかし、併用薬を知りたい理由を丁寧に説明するうち、ぽつりぽつりと薬への不安を口にするようになったのです。そこで「私から(医師に)聞いてみましょうか」と伝えたところ、「そんなこともしてくれるんだ」とぱっと笑顔になり、後日、併用薬を教えていただきました。

患者さんが、薬剤師の質問に答えても「意味がない」と、思っているから返事がないのだとしたら、「意味がある」と分かってもらう必要があります。我々が何のために質問しているのか、回答をもらうことでどのような情報を患者さんに提供できるのか、分かりやすく説明すること。たとえば「副作用についてたずねるのは、副作用が出やすい患者さんにはそれを予防する薬の飲み方をアドバイスできるから」といった具合に。また「○○について、もう少し詳しくうかがえますか」のように「お願い」すれば、誰でも無下に断れないもの。また、質問に答えてくれなくても「何か分からないことがあれば、いつでもご相談くださいね」とひと言を加えてみましょう。いつか患者さんを大切に思う心が届けば、質問に答えてくれると思います。

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専門家プロフィール

村尾 孝子

村尾 孝子(むらお たかこ)

薬剤師、医療接遇コミュニケーション コンサルタント、企業研修・講演・セミ ナー講師、株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業、埼玉大学大学院経済学部経営管理者養成コー ス修了、病院・薬局・教育研修会社勤務を経て現職。