• このエントリーをはてなブックマークに追加
薬剤師からのキャリアチェンジ 第2回予備校講師薬剤師からのキャリアチェンジ 第2回予備校講師

キャリアチェンジに成功した薬剤師の方にご登場いただく本連載。第2回は予備校講師の園部和史さんです。
薬剤師国家試験に合格して、病院や薬局で働く――。多くの薬学生が同じ進路を選ぶなか、国家試験の失敗を機に自身のキャリアを見直し、予備校講師の道を歩むことを決めた園部さんに、現在の仕事についてうかがいました。また、園部さんが務める予備校メディセレの代表取締役、児島恵美子氏にもインタビューしました。

園部和史(そのべかずのり)さん
2007年メディセレ入社。大阪校の講師兼室長して約10年間教壇に立つ。担当科目は有機化学、分析化学、生薬学、放射化学。認定薬剤師と心理カウンセラーの資格も持つ。現在は講師の他、教育担当者として講師育成にも勤しむ。

国家試験不合格が将来を考えるきっかけに

――予備校講師を志したのは国家試験不合格がきっかけだそうですが、どのような経緯で講師の職に就いたのでしょうか。

現役時代は国家試験に合格したら、薬局か病院で薬剤師として働くんだろうなぁと、ぼんやり考えていました。周りの友人も同じで、むしろそれが当り前であり、深く考えていなかったというのが正確かもしれません。
しかし、残念ながら国家試験に不合格となり、予備校に通うことになったんです。国家試験も間近になった1月のある日、社長の児島から「予備校講師にならないか」と声をかけられました。それまで、「講師」という職業を意識したことはなかったのですが、その日以来、授業中も「自分だったらこんな風に説明する」とか「もっとこうしたら分かりやすいのではないか」と、講師の立場で授業を受けるようになっていて(笑)。
国家試験に無事合格した後、児島に「講師として働かせてほしい」と伝え、講師人生がスタートしました。

――入社から講師デビューまでのプロセスを教えてください。

入社して1ヶ月間は、マナーやビジネススキル、プレゼンテーションスキルなどの研修を受けます。研修後、全国5ヶ所ある校舎への配属となり、担当科目が決定。その後、先輩講師に倣って講義の練習を重ね、児島やその他の講師陣を学生に見立てた模擬講義試験を受けます。これに合格するとめでたく講師として学生の前に立ちます。多くの新米講師が遅くとも9月頃までにはデビューします。
これまで、講師は私を含め新卒採用が大半でしたが、2014年からは「講師の多様性」を重視し、調剤薬局や病院での勤務経験をもつ薬剤師を講師として中途採用しています。中途の場合も、先ほどと同じプロセスを経て教壇に立ちます。

――具体的な仕事内容について教えてください。

授業は1コマ70分。大半は1日5コマを受け持ちます。授業前後は、資料の準備をしたり、授業内容に関するテストを作成したり、さらに学生からの質問を受けたりと、何気に忙しいです。授業は17時30分頃に終了しますが、その後も学生からの質問に対応しますので、学校を出るのは19時~20時の場合が多いです。授業についてだけでなく、進路やプライベートの相談など、とにかく学生のケアを第一に考えています。また、「オレンジブック」や模擬試験などの制作も講師が行なっています。

――予備校講師のやりがいと、苦労はどのような点ですか。

一番のやりがいは、やはり学生の国家試験合格です。模擬試験で成績が伸びた時なども嬉しいですね。学生以上に私が喜んでいるかもしれません(笑)。
苦労は、講義内容が学生に伝わらない時や、成績が伸びない時。私の場合、浪人時代の友人が偶然にも翌年、私の生徒になったため、私の良きアドバイザーとなってくれました。例えば「今日の授業のあの部分が分かりづらかった」など、講師1年目の私に対し、学生の目線で的確な意見をくれたので、それを参考に私も授業をブラッシュアップしていきました。

――今後は講師としてどのようなキャリアアップを考えていますか。

これまで10年間、薬学生の講師として経験を積んできましたが、今後はそれと並行して講師の教育にも関わっていきたい。学校は講師の質がすべてだと思っておりますので、各講師のキャラクターは生かしつつ、授業の質がさらに向上するような研修や模擬講義を実施してゆくつもりです。

メディセレ代表取締役社長の児島惠美子さんに質問!

――予備校講師に向く人のタイプや資質はありますか。

株式会社メディセレ代表取締役 児島恵美子氏
株式会社メディセレ代表取締役 児島恵美子氏

素直さと好奇心。そしてコミュニケーション能力ですね。一人ひとり個性の異なる学生を一度に相手するのですから、どんな人にも対等かつ円滑に対応できるスキルは重要です。合わせて、メンタル面の強さ、前向きさや素直さなども大切なパーソナリティとなります。
また、当校は学生と講師の距離が非常に近く、アットホームな校風。ですから、学生には大学教授のような威厳ある態度というよりは、学生に近い目線で接して信頼関係を構築してもらっています。時に厳しく、時にフレンドリーにと柔軟な対応をできる方は「先生として好かれるタイプ」ですね。

――講師は心理カウンセラーの資格を持っていると聞きましたが、その意図は何ですか。

国家試験の壁の前に、鬱になる学生に多く出会ったからです。
かつて、私も薬剤師国家試験に落ちて浪人生活をしたことがあります。その時の辛さや寂しさを知っているからこそ、学生の知識だけでなく、心も支えたいと思いました。その役割を学生が一番信頼を置いてくれている講師が担ってほしいと考えています。
ただ、これは予備校講師に限らず、薬局やドラッグストアで働く「薬剤師」にも、備えてほしいスキル。2008年にはNPO法人の医療心理学協会を設立し、次世代の薬剤師を創る会でも薬剤師のスキルアップの一つとして心理カウンセラー資格取得のための勉強会を一般の薬剤師向けに開催しています。

――予備校講師の魅力とは何でしょうか。

メディセレでは国家試験合格がゴールではなく、社会での活躍がゴールだと考えています。メディセレは、その前の「薬剤師国家試験」合格のための場所です。「もっとこうした方が分かりやすい」「次回は違うアプローチで講義してみよう」など、それぞれの講師がオリジナリティを持って授業を組み立てています。また、自社で経営する「メディセレ薬局」での実務経験談を授業に織り交ぜるなど、将来、薬剤師として働くことに対するモチベーションアップにも働きかけています。
規制緩和による薬学部増設により、近年、学生の学習レベルにかなり個人差が生まれています。ですから、学生一人ひとりに合わせた指導がより重要。勉強面、心理面ともに学生から信頼されるサポーターとして、現場経験のある薬剤師の方にも、どんどん活躍していただきたいですね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加