
パートで働くママ薬剤師が意識するのは「130万円の壁」ではないでしょうか。
ただ、漠然と130万円を意識していても、実際何がポイントとなるのかはわからないという方も多いのではないでしょうか。最近は、パートをめぐる税金や社会保険の改正も続いています。
本記事では、130万円の壁のしくみや、年収によって手取りがどう変わるのかをわかりやすく解説します。
記事のポイント
・130万円の壁は、配偶者の社会保険の扶養に入れるかの年収基準。
・薬剤師は時給が高いため、130万円を超えやすい。
・130万円未満で働くかは、今後の制度の変化や、将来の年金なども含めて判断することが大切。
130万円の壁とは?

まず、「130万円の壁」について、基本的なことを確認しましょう。
130万円は社会保険の扶養に関する基準
130万円の壁とは、社会保険の扶養に関する年収基準です。配偶者が会社員や公務員で、その健康保険の被扶養者になっている人に関係します。
扶養に入るには、次のような条件を満たす必要があります。
・週の所定労働時間が20時間未満
・正社員の所定労働時間・日数の4分の3以上に該当しない
・年収見込みが原則130万円未満
・勤務先の社会保険の加入対象にならない
扶養に入れば、20歳以上60歳未満の配偶者は、国民年金の第3号被保険者となり、自分で健康保険料や国民年金保険料を納める必要がありません。
一方、年収見込みが130万円以上になると、原則として社会保険の扶養から外れます。その場合は、勤務先の健康保険・厚生年金に加入するか、自分で国民健康保険・国民年金に加入しなければなりません。
なお、2026年4月以降、労働契約から見込まれる年間収入が130万円未満で、ほかの収入がない場合は、原則として労働契約の内容に基づいて扶養認定を受けられる取り扱いが始まっています。
単に前年の年収だけで判断されるわけではないため、雇用契約書や労働条件通知書を確認しましょう。
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税金の扶養と社会保険の扶養は異なる
税金と社会保険では「扶養」のしくみが異なります。
税金上の扶養では、配偶者控除や配偶者特別控除により、主に扶養する側の税負担が軽減されます。
一方、社会保険の扶養に入っている人は、自分で健康保険料や国民年金保険料を負担せずに済みます。
そのため、年収130万円以上になって社会保険の扶養を外れても、ただちに配偶者控除・配偶者特別控除が受けられなくなるわけではありません。
「税金がかかる年収」と「社会保険の扶養を外れる年収」は分けて考えることが大切です。
106万円の壁との違い
106万円の壁とは、一定の条件を満たす短時間労働者が、勤務先の健康保険・厚生年金に加入する目安として使われてきた言葉です。
従来は、従業員数51人以上の会社などで、次の条件を満たす場合、自分で勤務先の社会保険に加入することになっていました。
・週の所定労働時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8万8,000円以上
・2カ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
ただし、2026年10月には月額8万8,000円以上という賃金要件が撤廃されます。また、会社の従業員数に関する要件も今後段階的に縮小・撤廃される予定です。
勤務先の規模によって異なりますが、原則として週20時間以上働くと、勤務先の社会保険に加入することになります。
これまでは、「勤務先が大きいと106万円、小さいと130万円」というように、年収がある程度判断基準になりましたが、今後は「週20時間以上働くか」を基準として、それぞれの条件に応じて扶養に入れるかが判断されることになります。
薬剤師パートが130万円の壁を超えやすい理由

薬剤師は一般的なパートに比べて時給が高く、少ない勤務時間でも年収130万円に達しやすくなっています。
時給が高く、短時間でも年収130万円に達しやすい
薬剤師の平均時給は2,000円を超えています。
たとえば、無理なく働ける範囲でと考えて、1日6時間、週3日勤務すると、概算年収は次のようになります。
2,000円×6時間×週3日×52週=187万2,000円
週3日程度の勤務でも180万円を超えてしまいます。
逆に言えば、130万円に収めようと思えば、働く時間をかなり抑えなければならないということになります。
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残業代や賞与なども収入に含まれる
社会保険の扶養判定では、基本給だけでなく、継続的に受け取る各種手当や賞与、非課税の通勤手当なども収入に含まれるのが一般的です。
そうなると、年収を130万円に収めるにはますます働く時間を少なくしなければなりません。
ただし、2026年4月以降の扶養認定では、労働契約に基づく年間収入の見込みが重視されます。契約にない一時的な残業代などにより、実際の収入が130万円を超えただけで、直ちに扶養から外れるとは限りません。
詳しい条件については、配偶者の加入する健康保険へ事前に確認しましょう。
130万円を超えると薬剤師パートの手取りはどう変わる?

では、パートで働く場合、年収によって手取りはどのように変わるのかをシミュレーションしてみましょう。
ここでは比較をわかりやすくするため、税金や雇用保険料を考慮せず、年収から健康保険料と厚生年金保険料のみを差し引いた金額を示します。
実際の手取り額は、居住する自治体、前年の所得、各種控除、健康保険料率などによって変わり、ここで示した金額より少なくなります。
また、年収135万円・150万円の試算は、勤務先の社会保険の加入要件を満たしていると仮定したものです。短時間労働者が勤務先の社会保険に加入するには、原則として週の所定労働時間が20時間以上であることなど、一定の要件があります。加入要件を満たさない場合は、国民健康保険・国民年金に加入します。
年収120万円のケース
まず、扶養の範囲に収まる年収120万円のケースをみてみましょう。
年収見込みが130万円未満で、ほかの扶養条件も満たしていれば、配偶者の社会保険の扶養に入れます。年金や健康保険の自己負担がないため、得られる金額は120万円となります。
年収135万円のケース
次に、130万円を少し超えたケースをみてみましょう。
年収135万円で勤務先の社会保険に加入した場合、本人が負担する健康保険料と厚生年金保険料は年間約19万円で、社会保険料を差し引いた金額は約116万円となります。
年収120万円のケースより額面年収は約15万円増えていますが、社会保険料が発生するため、社会保険料を差し引いた後の金額は少なくなっています。
年収150万円のケース
年収150万円で勤務先の社会保険に加入した場合、本人が負担する健康保険料と厚生年金保険料は年間約21万~22万円、社会保険料を差し引いた金額は約128万~129万円となります。
この金額は、年収130万円未満に収めた場合とほぼ同水準です。年収150万円を超えることが、いわゆる「働き損」とならないためのめやすだといえます。
ただし、税金や雇用保険料、配偶者の家族手当などによって、実際に扶養内の手取りを上回る年収は異なります。
社会保険に加入した後も、働く時間を増やせば基本的に手取りは増えていき、たとえば年収160万円では社会保険料を差し引いた金額は約137万円となります。
ただし、扶養内で働く場合の手取りを明確に上回るには、ある程度年収を増やす必要があります。
130万円の壁を超える場合は、高時給という薬剤師資格のメリットを活かして、損得に振り回されない金額までしっかり働くほうがいいといえるでしょう。
社会保険では、健康保険料と厚生年金保険料は勤務先と従業員が原則として半分ずつ負担します。
また、自分で社会保険に加入すると、将来受け取る厚生年金が増えるほか、条件を満たせば、病気やけがで働けないときの傷病手当金、出産のために休業したときの出産手当金を受け取れます。
保障が手厚くなる点は、社会保険料に加入するメリットです。
働き方を考える際には、現在の手取りだけでなく、将来得られる収入も併せて考えるようにしましょう。
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一時的に130万円を超えた場合はどうなる?

扶養の範囲で働いているのに、予定外に残業を頼まれたり、繁忙期に勤務時間が増加したりして、年収が130万円を超えた場合には、扶養を外れなければならないのでしょうか。
このような場合は、勤務先の事業主が収入増加は一時的であると証明することにより、引き続き扶養に入れるという特例があります。
この特例は、原則として連続する2回の被扶養者確認まで利用できますが、最終的には配偶者が加入する健康保険の判断となります。
一時的に勤務を増やすときは、事業主が証明書を発行できるか、配偶者の健康保険で特例が認められるかを早めに確認しておきましょう。
【Q&A】130万円の壁についてよくある疑問

130万円の壁について、パート薬剤師が疑問に感じやすい点を解説します。
交通費や賞与も130万円に含まれる?
社会保険の扶養を判定する際の収入には、原則として交通費や賞与も含まれます。
2026年4月以降の認定では、労働条件通知書などから見込まれる年間収入が判断材料になります。基本給だけではなく、契約上支給される諸手当や賞与を含めて確認する必要があります。
参考:労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて/日本年金機構
130万円を超えたらいつ扶養から外れる?
社会保険の扶養は、実際の収入が130万円を超えた時点で外れるとは限りません。
原則として、雇用契約の変更などにより、今後1年間の収入見込みが130万円以上になった時点で扶養から外れます。
たとえば、時給の引き上げや勤務時間の増加によって年収130万円以上になると見込まれる場合は、その契約変更日などが扶養を外れるめやすです。
扶養を外れた後は、勤務先の加入要件を満たす場合には健康保険・厚生年金に加入します。加入要件を満たさない場合は、国民健康保険と国民年金への切り替えが必要です。
判断時期や必要書類は加入する健康保険によって異なるため、配偶者の勤務先へ早めに確認しましょう。
130万円の壁を理解して自分に合った働き方を選ぼう

薬剤師パートは時給が高く、週2日程度の勤務でも130万円の壁を超えることがあります。
やみくもに扶養内に収めるのではなく、実際の手取り、将来の年金、利用できる保障、今後のキャリアプランと育児との両立を含めて働き方を考えましょう。



